本研究の目的は指両生類で得た四肢再生に関する知見を高等脊椎動物に応用してゆく足掛かりをつかむことにあった。その第一歩としてニワトリ胚を用いた四肢再生実験を提案した。両生類ではAEC(ニワトリではAER)と呼ばれる上皮性の構造が誘導されることで四肢再生の引き金がひかれることを突き止めていた。高等脊椎動物ではAEC(AER)が切断後再形成されないことは事実としてすでに知られている。また、既知の事実としてはニワトリ胚でも肢芽切断後AERを人為的に「張り付けてやる」と先端部側に失った構造が再生される。これらの事実はAERさえ、切断後に再誘導してやれば高等脊椎動物でも再生が起こせる可能性が高いことを示していると考え提案にある研究を考えた。本研究費の趣旨として「スタートアップ」であり、実験に十分な設備を整えることに重点を置いた。基本的な分子生物学実験と論文投稿に必要な一式、さらには実験手技一式を手に入れることができた。実験の結果としては別項に示したように論文としても報告することを得た。損傷後FGF10とWnt2bを与えることでAER様の構造を再誘導することが可能であることが判明した。これは、AERが再生の引き金であることを勘案すれば「高等脊椎動物での再生に向けた第一歩」としては十分な成果であると考える。今後はより、成体に近い個体での再生研究に挑んでゆきたいと考えている。本研究成果をもとに現在は、有尾両生類の知見が高等脊椎動物に向けた知見として有効であることを証明するため世界的なネットワークの中で研究を行っている。
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