本研究は、領域性獲得の機構解明を念頭に、時間軸や領域性によるニューロン産生のダイナミクス、脳組織構造の違いをもたらす機構、さらに脳の形作りの機構の解明を目的とする。 本年は、誕生直後のニューロンの振る舞いを明らかにするためにGFPなどを用いて可視化しtime lapsによる観察を行なった。まず、マウス胎令13日目の大脳皮質で観察し、少なくとも一部のニューロンでは、最終分裂後、皮質に移動する間平均約12時間は周囲の神経幹細胞と接着帯を保ったままであること存明らかにした。さらに、マウス胎令13日目の大脳皮質に相当するニワトリ胚の大脳を観察したところ、細胞の振る舞いがマウスとは異なっていることがわかった。この点については現在さらに解析中であるが、細胞の振る舞いの違いは層構造を作るか核構造を作るか、構造の違いに反映される可能性がある。 また、境界細胞の誘導実験にもとりかかっており、境界細胞の形成に関わっているHes1を局所に導入する方法を確立した。今後、Hes1を局所に発現させた胚において、境界細胞様の細胞郡ができているのか、できているときには細胞の動きや形態形成にどのような影響があるのか検討していく。 21年度は、本研究を遂行するにあたり、主に実験や解析系の確立を行なった。系の準備はほぼ予定通りに進んでおり、22年度の研究解析が進み、脳の領域に応じた組織構造の獲得の機構が解明されることが期待される.この研究成果は、ほ乳類が層構造をもった大脳皮質を獲得した遺伝的背景の解明や、再生医療への応用に貢献できる。
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