本研究は、相同組換えタンパク質RAD51の新規相互作用因子であるヒトEVLの相同組換え修復における機能を明らかにすることが目的である。EVLの機能解明に向けて、 1)EVLとTOPO3αの機能及び物理的相互作用 2)ヒトの相同組換えタンパク質によって末端のないDNA基質間で組換え反応を起こすか 3)EVL欠失変異体を用いたEVLの活性部位の同定 を生化学的手法を用いて解析した。EVLとTOPO3αの機能的相互作用を調べた結果、EVL及びTOPO3αによって単鎖DNAのカテネーションが起こることが明らかになった。また、Biacoreなどの相互作用解析から、EVLはTOPO3αと直接結合することが明らかになった。さらに、TOPO3αの有する環状二重鎖DNAのリラクゼーション活性に、EVLが影響を及ぼさないことが示された。一方で、環状単鎖DNA、その単鎖DNAの一部と相同な配列を有する環状二重鎖DNA、RAD51及びTOPO3αを用いて両DNA間でヘミカテマーができるかどうかを電気泳動法により解析した結果、新たに多量体DNAが形成された。この多量体DNAは、単鎖DNAのみや二重鎖DNAのみの解析においては検出されなかったことから、単鎖及び二重鎖DNAが複合体を形成したヘミカテマーであり、末端のないDNA基質間で組換え反応が起こることが示唆された。また、EVL欠失変異体による解析から、EVLの221~418番目のアミノ酸領域が、RAD51との結合やRAD51の組換え活性の促進に重要であることが明らかになった。以上の解析から、EVLがTOPO3αと協同して相同組換え修復で働くことが示唆された。また、EVLの222~418番目のアミノ酸領域が、EVLの相同組換え修復に関わる活性中心であることが示された。さらに、真核生物においても末端のないDNA基質間で組換え反応が起こることが初めて示唆された。
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