研究課題
セントロメアは、S期で複製された姉妹染色分体を2つの娘細胞に正確に分配するのに必要なゲノムDNA上の領域である。これまでの報告により、ヒストンH3バリアントの一種類であるCENP-Aがセントロメア領域の形成に中心的な役割を果たしていることが知られている。CENP-Aはセントロメア領域において、ヌクレオソームを形成しており、このCENP-Aを含むヌクレオソームの立体構造がセントロメア領域に特徴的なクロマチン構造の形成に重要だと考えられる。そこで我々はCENP-AヌクレオソームのX線結晶構造解析を通して、セントロメア領域の形成機構を明らかにすることを研究目的とした。CENP-AヌクレオソームのX線結晶構造解析を行うために、ヒトのヒストンH2A、H2B、CENP-AおよびH4を、大腸菌を用いて発現・精製した。ヌクレオソームの再構成に用いるDNAは、ヒトのセントロメア領域の配列を用いた。試験管内において、塩透析法によりCENP-Aヌクレオソームを再構成した後に、電気泳動法により精製を行った。精製したCENP-Aヌクレオソームを蒸気拡散法により単結晶化した。大型放射光施設にて、得られた結晶にX線を照射し、回折波のデータを収集し、3.6Aの分解能でヒトのCENP-Aヌクレオソームの立体構造を決定した。決定した立体構造より、各2分子のヒストンH2A、H2B、CENP-A、H4からなる八量体にDNAが左巻きに結合した構造であることが明らかとなった。H3ヌクレオソームとの違いとして、ヒストン八量体に安定に結合しているDNAの長さが121塩基対と26塩基対短いことが明らかとなった。このことはCENP-Aヌクレオソームが形成されることにより、高次クロマチン構造に変化を引き起こし、セントロメア領域に特徴的なクロマチン構造の形成にCENP-Aが寄与している可能性を示していた。
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