昆虫の脳内での高次中枢での温度・湿度情報処理機構を解析するために以下の研究を行なった。第一に温度・湿度情報や嗅覚情報処理における一次中枢である触角葉の神経解剖学的解析を行った。昆虫の触角葉は嗅覚や温度・湿度感覚の機能単位である約205個の糸球体から構成される。これら糸球体を全て同定、命名し、その完全な触角葉内での地図を作成した。この結果についてはすでに論文として投稿し、現在出版準備中である。第二に細胞内記録法を用い、触角葉での温度・湿度および嗅覚情報処理機構を明らかにした。触角葉の糸球体構造でこれらの感覚モダリティは二次ニューロンである投射ニューロンへと伝えられる。投射ニューロンからの網羅的な細胞内記録によって、これらの情報は糸球体の位置情報と投射ニューロンでの神経応答パターンによる時間情報に変換されることがわかった。特に投射ニューロンの時間情報は触角葉で糸球体間を接続する局所介在ニューロンによる抑制性の入力によって形成されることが投射ニューロンと局所介在ニューロンからの同時記録によって明らかになった。これらの結果については日本比較生理生化学会第31回大会で報告し、大会発表論文賞を受賞した。また、ワモンゴキブリでの研究と並列して、高度に発達した社会性昆虫であるアリでの温度・湿度情報処理についての神経解剖学的研究を行なった。結果、ゴキブリと非常に相同な温度・湿度糸球体構造があることが明らかにになった。これらの研究結果についてはずでに共著者として二本の論文で報告している。
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