RAR1、SGT1及びHSP90を含むシャペロン複合体は免疫レセプター(Resistance protein)の安定化に重要な役割を担う。英国Institute of Cancer Researchと共同でX線結晶解析を行ったところ、RAR1、SGT1及びHSP90を含む複合体の立体構造解明に成功した(論文投稿中)。立体構造情報をもとに生化学、分子生物学的解析を行ったところ、RAR1はSGT1及びHSP90と直接結合することにより複合体形成を促進することが明らかになった。さらにSGT1はRAR1と結合することにより、免疫レセプターとの結合親和性を増大することが分かった。RAR1のSGT1結合部位に変異を導入して調べたところ、RAR1とSGT1の結合が複合体形成、及び抵抗性反応の誘導に必須であることが明らかになった。また、HSP90との結合部位に存在するRAR1のHis残基はHSP90のnucleotid binding siteに近接することから、RAR1とHSP90の結合親和性はHSP90に結合するNucleotideの種類により影響を受けること、さらにRAR1はHSP90のATP活性に何らかの影響を与えることが予想された。そこでリコンビナント蛋白質を用いてin vitroにおける解析を行ったところ、RAR1とHSP90の結合はADP存在下で増強し、また、RAR1はHSP90のATP分解活性を増大させた。さらに、RAR1によるHSP90のATP分解活性の増大にはRAR1のHis残基が必須な役割を果たすことが分かった。本年度の研究によって明らかになったRAR1の機能について、その生理学的な意義を明らかにするため、次年度はRAR1によるHSP90のATP分解活性の増強が病害抵抗性や免疫レセプターに及ぼす影響を生化学的及び分子生物学的手法を用いて調べる。
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