研究概要 |
RAR1、SGT1及びHSP90を含むシャペロン複合体は免疫レセプター(Resistance protein)の安定化に重要な役割を担う。英国Institute of Cancer Researchと共同でX線結晶解析を行ったところ、RAR1、SGT1及びHSP90を含む複合体の立体構造解明に成功した(Zhang and Kadota et al., Mol Cell 2010)。立体構造情報をもとに生化学、分子生物学的解析を行ったところ、RAR1はSGT1及びHSP90と直接結合することにより複合体形成を促進することが明らかになった。さらにSGT1はRAR1と結合することにより、免疫レセプターとの結合親和性を増大することが分かった。RAR1のSGT1結合部位に変異を導入して調べたところ、RAR1とSGT1の結合が複合体形成、及び抵抗性反応の誘導に必須であることが明らかになった。興味深いことに、複合体の立体構造においてRAR1はHSP90に結合したヌクレオチドとイオン結合していた。そこでHSP90のATP分解活性を測定すると、RAR1の濃度依存的にHSP90のATP分解活性が増大した。このことから、RAR1は複合体の形成を促進するとともに、HSP90のATP分解活性を促進することで複合体の機能を増強することが分かった。HSP90のATP分解活性の促進に必須なRAR1のアミノ酸残基及びHSP90との結合に必須なRAR1のアミノ酸残基はCHORD1及びCHORD2ドメインの両方に保存されており、さらに生化学的な解析からも両方のドメインがHSP90のATP分解活性の促進ができることが示唆された。さらに、動物のRAR1ホモログにおいても、これらアミノ酸残基の多くは保存されており、このRAR1の機能は種を超えて保存されていることが示唆された。
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