チャルメルソウ節を構成する種の大部分である10種において、イルミナ社DNAシーケンサーを用いたSuperSAGE法により今まさに匂いを放出している花についてトランスクリプトーム解析を行った。得られたタグ配列を、Perlを用いたバイオインフォマティクスの手法で解析した。その結果、近縁な別種間でのゲノムワイドかつ網羅的なトランスクリプトーム比較にはじめて成功した。これにより、遺伝子発現パターンがどのように系統進化するかを世界に先駆けて解明するためのデータが得られた。実際に種間の遺伝子発現パターンの違いは系統関係をある程度反映していることが示唆された。 また、申請者が考案したSuperSAGEタグマーカー法のプロトコルを確立した。SuperSAGE法のデータで得られる10000を超えるタグのうち、8割以上についてゲノムからの近傍配列の増幅が可能であり、またこれらの大部分にゲル電気泳動でも十分に確認できるほどの大きなサイズ多型が存在することを明らかにした。これにより、ひとたびSuperSAGE法による解析データを得れば、あとはどのような生物種であっても無尽蔵に多型性の高いマーカーを開発できるようになった。 以上のデータをさらに解析し、チャルメルソウ節における送粉者が介在した種分化の鍵となるSuperSAGEタグを数種同定した。これらの元となった遺伝子配列の中には種間で配列に違いのあるものもあった。
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