鉄-ポルフィリン錯体であるヘムはタンパク質の活性中心として生体内で様々な役割を果たしている。しかし、ヘムが蛋白質から遊離した場合は毒性を示すため、哺乳類においては細胞内で速やかに分解されることが知られている。本研究では遊離のヘムを分解するのではなく、結晶化することで無毒化を行うマラリア原虫の機構に着目した。ヘム結晶化の活性を持つHDPと呼ばれるタンパク質のcDNAをDNA合成により調製し、大腸菌での組み換えタンパク質発現を試みた。既報では不溶画分からヒスチジンタグを利用して精製しているが、様々なタグによる発現を試してみた結果Trigger Factorを利用することで可溶画分にHDPが得られた。また本来のヘム結合アミノ酸残基と競合する可能性があるヒスチジンタグを持たないHDPを精製することにも成功した。いずれのタンパク質もヘム結晶化の活性をもち、ヘム存在下ではヘムタンパク質特有の吸収スペクトルを示すことが明らかとなった。
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