昨年度に引き続き、当研究室で集積してきた多種のC末端アミド構造認識抗体を用いて抗体結合カラムを作成し、抗原ペプチド(生理活性ペプチドの部分ペプチド)や抗原に類似した構造をもつ既知のペプチドを用いて、濃縮率や抗原認識の特異性などに関する基礎データの収集を行った。ペプチドC末端のアミド化を触媒する酵素PAM(peptidyl-glycine alpha-amidating mono-oxygenase)の発現が見られる組織や、細胞を対象として、それぞれペプチドーム解析法に従ってペプチド画分を調製した。調製したペプチド画分からC末端アミド化ペプチドを濃縮するため、多種の抗体結合カラムに通した後、カラムに保持されたペプチドを溶出・回収し、ナノ流速逆相LCにより高精度に分離し、MADI-TOF/TOF tandem MS(ABI 4800)やLTQ-Orbitrap(Thermo-Fischer)を用いて包括的に同定を行った。また、タンパク質分解物や試料中での存在比が非常に高いペプチドがカラムへ非特異的に吸着し、微量なペプチドの同定を妨げるため、これらの除去方法も引き続き検討を行った。抗体結合カラム樹脂や存在量が多いペプチドに対する抗体結合カラムなどによる前処理で非特異的吸着物を除去し、試料のカラムへの結合・溶出時に塩濃度や有機溶媒濃度を変化させて分画することで、非特異的吸着物を減少させることが可能となり、C末端アミド化ペプチドの濃縮率を向上できた。未知のC末端アミド化ペプチドは検出できなかったが、これまでに報告されていない培養細胞種から既知のC末端アミド化ペプチドの分泌を確認できており、引き続き非特異的吸着を減少させる条件を検討し、適切な細胞、組織のペプチド画分を組み合わせることにより、新しいC末端アミド化ペプチドを同定することが可能になると考えられる。
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