研究概要 |
世界的に深刻な問題となっている干ばつに対するコムギの耐性を強化することを目的として,本年度は下記の3項目について研究を行った. 1.極めて強い干ばつが発生するシリア国にある国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)で育成されたコムギ系統の土壌乾燥に伴う蒸散量の評価:供試材料として,ICARDAで育成された乾燥抵抗性の異なる4系統のコムギを用いた.これらの系統をポットに播種して,十分に冠水する条件(灌水区)と灌水を停止する条件(乾燥区)とで栽培して,重量法により蒸散量を測定した.実験は4月下旬から開始した.灌水区に対する乾燥区の蒸散量の比毎日計算して,その比が1.0から急激に減少する(すなわち乾燥区における気孔閉鎖の開始)土壌水分含量の系統間変異を調査した.また,その時の根長を調査して,単位根長あたりの蒸散量(すなわち根の透水性)を調査した.その結果,土壌乾燥に対する気孔閉鎖時期には系統間差異が認められ,比較的湿潤な土壌でも気孔を閉鎖してしまう系統と,土壌の乾燥が進んでも気孔を開いていられる系統があることが示された. 2.サーモグラフィーを用いた葉温の測定手法:葉温測定に用いるNEC ThermoShot F30で,ポットに栽培したコムギ植物体を撮影して,被写体との距離や撮影背景などについて調査した. 3.供試材料の増殖:次年度以降に供試する国内外の遺伝資源について,北大の圃場で栽培して種子増殖を行った.
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