研究課題
【研究の目的】腎疾患に罹患した動物の尿中バイオマーカーRNAをターゲットとして非侵襲的分子診断法を開発し、獣医学・医学臨床の発展に寄与する。【研究実施計画】前年度では、病態モデル動物の解析によって、慢性腎臓病(CKD)の進行と共に尿中には脱落した腎実質細胞由来mRNAが出現することを解明した。今年度は、病態モデルおよび伴侶動物の腎臓病理と尿中RNA出現動態の相関を解析した。【今年度の研究実績】CKDの主因となる糸球体腎炎のモデルマウス(BXSB)を解析した。BXSBの尿中には糸球体上皮細胞(Nephs1)、遠位尿細管(Slc12al)および集合管(Aqp2)の上皮細胞マーカーmRNAが高率に出現した。更なるバイオマーカー探索のため、BXSBの腎臓内mRNA発現を網羅的に解析し、C3mRNAが腎臓で高発現し、かつ尿中で高率に検出されることを明らかにした。さらに、CKDモデルマウスの腎臓におけるmicroRNA発現を網羅的に解析し、miR-146aが腎臓内・尿中で高発現することを明らかにした。獣医臨床的エビデンスを得るために、CKDに罹患した伴侶動物の腎臓・尿を解析した。CKD病理像はイヌとネコで異なり、前者では糸球体病変、後者では尿細管間質病変が特にシビアであった。イヌの糸球体傷害スコアおよび血清クレアチニン値は、腎臓内糸球体上皮細胞マーカーのmRNA発現と負の相関を示し、CKD罹患イヌの尿中には糸球体上皮細胞マーカーmRNA(ACTN4)が高率に検出された。一方、ネコではイヌのような傾向は得られなかった。本研究は、糸球体および尿細管間質病変の存在を腎実質細胞由来の尿中mRNA検出によって予測できる可能性を示した。さらに、伴侶動物ではCKDの病理メカニズムが種で異なるため、獣医学領域では動物種ごとのバイオマーカーRNAの開発が重要であると考えられる。
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Histology and Histopathology
巻: (in press,in press)
PLoS ONE
巻: 6(1) ページ: e16472
The Journal of Veterinary Medical Science
巻: (Epub ahead of print,Epub ahead of print)
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