研究課題
若手研究(スタートアップ)
トリパノソーマの発現する表面変異糖タンパク質(VSG : Variable Surface Glycoprotein)がアフリカトリパノソーマ症の制圧を困難にしている。しかし、宿主血流内でVSGを発現しているトリパノソーマ(Trypanosoma vivax)の血流型は媒介昆虫であるツェツェバエ(Glossina morsitans)に感染するとVSGを発現しない昆虫型へ分化する。このような昆虫型への分化はツェツェバエ以外の昆虫種による吸血時には誘導されない。また近縁種であるTrypanosoma bruceiについては、培養条件下での昆虫型分化誘導方法が幾つか開発されており、その1つとしてウシ由来のトリプシンを加えた培地中での培養が知られている。本研究では、昆虫種間でのプロテアーゼ活性の違いが昆虫型分化誘導能の違いを担うという仮説を検証するため、ツェツェバエとその他の吸血性双翅目昆虫からセリンプロテアーゼ(トリプシン・キモトリプシン)遺伝子を単離し、それらの組換えタンパク質についてトリパノソーマ昆虫型分化誘導能を比較する。現在までにツェツェバエとサシバエ・ノサシバエそれぞれからトリプシン遺伝子とキモトリプシン遺伝子の部分配列(約500bp)を単離した。キモトリプシンについて予想されるアミノ酸配列を比較すると、サシバエとノサシバエの配列は互いに80%以上が一致するのに対し、ツェツェバエの配列とは約50%しか一致しなかった。またトリプシンの予想アミノ酸配列については、各種間で50%程度しか一致しなかった。このような配列の違いが各プロテーアーゼで活性に影響し、トリパノソーマ昆虫型の分化誘導能の違いを生み出していることが予想される。
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Journal of Insect Physiology 56
ページ: 288-295
The Journal of veterinary medical science (印刷中, 未定)
Proceedings of the Royal Society B (印刷中, 未定)