研究概要 |
昨年度中にすでにケテンを利用したアルキベマイシン類分子中央部(テトラヒドロ-1,2-オキサジン-3,5-ジオン構造)のモデル化合物の合成を完了していたが、収率や反応条件が実際の基質における合成で問題となり得る事が予想された。そこで本年度は以下の2つの合成戦略によりアルキベマイシン類分子中央部モデル化合物の合成研究を行った。まず一つめは、アルキベマシン類の単離構造決定を行った五十嵐らにより分子中央部の生合成仮説が提唱されていたので、チオールエステルを利用した生合成経路模倣によるClaisen縮合を検討した。しかしながらN-Oエステルが不安定なためか、現在までのところ鍵反応を検討するために必要な基質の合成に至っていない。2つめはO-Cアシル転位を利用する合成戦略である。これまでの合成研究において本法が適用可能であればより穏和で収束的な合成経路が実現可能であったが、有効な条件を見出せずにいた。しかしながら、本年度仙石らにより塩化カルシウムとDMAPを用いたテトラミン酸誘導体の合成法が発表されたので(第52回天然有機化合物討論会講演要旨集,pp.349-354)、現在本法を検討中である。 その他にも特異な生物活性を有するインドールジテルペン類の合成研究にも携わり、これまでに得た知見をもとに痙攣作用物質paspalicineの形式合成を達成した。さらに、指導学生との共同研究によりlupinacidin Cの絶対立体配置を明らかにするとともに、malyngic acidおよびその類縁体の全合成も達成した。
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