研究課題
生物のサイズは種によって決っているが、その決定機構はほとんど不明である。本研究では、魚類における種特異的な体サイズを決定するゲノム領域を特定することを目的とした。実験魚には、成魚の体長が70cmに達するトラフグと、その近縁種であるものの体長が20cmに満たないクサフグの雑種第2世代を用いた。具体的には、両種の成長速度の差に注目して、その差に影響する遺伝子領域をトラフグの充実したゲノム研究基盤を活用した高解像度連鎖解析により特定した。前年度までに、トラフグとクサフグの雑種第1世代同士(F1)を交配した雑種第2世代(F2)に加えて、F1雄とクサフグ雌とを戻し交配して得た集団(BC)についてQTL解析を行い、両種の成長速度に差をもたらすゲノム領域を連鎖群A上の3Mbpの領域に同定した。本年度は、この領域を1.5Mbpに絞ることが出来た。当該領域は、市販されているトラフグのコスミド(Cosmid)や人工染色体(BAC : Bacterial Artificial Chromosome)でその98%がカバーされた。必要なクローン数はそれぞれ6個と9個であった。申請時には、これらのクローンをクサフグに顕微注入法で導入し、表現型への影響を評価することで、両種の成長速度に差をもたらす遺伝子の位置を同定する計画であった。しかし、メダカ由来のトランスポゾンが利用可能となったので一部計画を変更した。このトランスポゾンを用いれば、通常の遺伝子導入で問題となる導入遺伝子のキメテ化が改善され、導入遺伝子の胚に均一に導入される確率が格段に向上するために表現型の影向力を評価しやすい。本年度は、トテンスポゾンの導入が間に合った1クローンのみ導入したが、成長速度の促進は認められなかった。残りのクローンに関しては23年度に導入を試みる予定である。
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