近年、モクセイ科やリンドウ科などの植物にのみ存在するイリドイド化合物は植物の生体防御化合物であると提唱されているが、未だ分子レベルでの解明はなされていない。本研究ではイリドイド化合物の一つであるオレウロペインを化学防御物質前駆体と考え、環境ストレス(本研究ではオリーブアナアキゾウムシの食害)に対する樹木の化学防御機構の解明を目的とした。平成21年度はA)食害に対するオレウロペインの内生量変動の解析、B)オレウロペインを防御活性化物質へと変換するβ-グルコシダーゼ(β-GH)精製について取り組んだ。その結果、A)オレウロペインは葉において生重量あたり7-8%含まれていることが明らかになった。辺材(枝外側)に多く、花、実、心材におけるオレウロペイン含有量は生重量あたり0.05%-2%であった。以上より、食害昆虫に被害をうける部位においてオレウロペイン含有量が多いことが明らかになった。環境ストレスとオレウロペイン含有量の関連性を示す知見が得られた。また植物の傷害応答ホルモンであるジャスモン酸メチルをオリーブに噴霧して、経時的にオレウロペイン内生量の分析を行った。その結果、0-4時間においてオレウロペイン内生量の減少が確認できたB)オリーブ葉および実を用いて、オレウロペイン特異的糖加水分解酵素(β-グルコシダーゼ(β-GH))の単離・精製を試みた。オリーブ葉または実を凍結破砕した後、アセトン沈殿、硫安沈殿を行った。30-80%硫安沈殿で得られた沈殿物をホウ酸バッファー(pH9)に溶解して、陰イオン交換カラム(HiTrapQ FF)、次いで疎水カラム(HiTrap phenyl)に供した。その結果、粗酵素液に比べ疎水カラム画分における比活性は上昇していた。現在LC-MS/MSを用いて、ペプチド配列を解析している。
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