我々は高度不飽和脂肪酸生産性糸状菌Mortierella alpina 1S-4を土壌より単離し、油脂発酵生産を行うとともに脂質生合成経路を解明してきた。また、一連の変異処理の過程で脂質を漏出する変異株V6株を取得した。漏出した油滴小胞膜の脂質成分のうち、極性脂質の主要成分3種の分子種を単離し分析を行った結果、この内一つはステロールにグルコースが結合したステロール配糖体であると考えられた。残りの2種は、スフィンガジエニン型長鎖塩基から構成されるセレブロシド、および、ヒドロキシスフィンガジエニン型長鎖塩基から構成されるセレブロシドであると推定した。また、脂質の漏出の顕在化には、細胞壁の脆弱性と旺盛な生育が必要であることがわかった。一方で、M.alpinaの分子育種法の整備を行い、一回交差による相同組換え効率を改善すべく非相同組換えに関与するKu80遺伝子の破壊、及び、複数の遺伝子機能の評価に必要な多重要求性変異株の構築に成功した。
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