研究概要 |
1) 圧密に伴うスギ丸太材の力学的挙動の変化を調べ、製造条件を最適化するため、様々に圧縮率を変化させたスギ圧縮木材を作成し、その力学材料特性を評価した。材質試験はJISの試験基準に準じて行い、曲げ・引張・せん断及び部分横圧縮試験を行った。異なった材冠から採取した元材料から一連の試験体を採取することで材質のばらつきを評価した。その結果、様々な力学特性値に対して、圧縮率に伴う密度の変動に応じた力学特性の変化を予測しうる算定式を導いた。 2) 圧縮木材の長期的安定性能を評価するため、圧縮木材の周囲湿度環境の変動下での寸法回復試験を行った。温度を20℃で一定とし、相対湿度が40%と80%を三日間周期で変化させた周囲環境下に圧縮木材試験片を設置し、中央相対変位を計測することにより湿度変動に応じた回復率を実測した。その結果、製造時加圧鋼板温度が100℃,130℃の条件では回復率10%程度まで徐々に寸法回復が生じたが、製造温度が180℃の条件ではほとんど寸法回復が見られなかった。また初期含水率が高い試験体は寸法安定性が増す傾向が見られ、加圧製造時に木材内部で水蒸気処理効果による寸法安定性が付与されている可能性が示唆された。 3) 中空丸太材の構造部材性能を評価するため、トラス端部接合部の引張性能を評価した。径が120mm程度の北山スギ丸太に径50mmの中空孔を設け、厚さ3mmの鋼管パイプジョイントを挿入してドリフトピンで留め付ける接合法を開発した。引張試験の結果、ドリフトピン2本打ちでは40kNを越える耐力を示し、また内部における端距離に影響された丸太特有の破壊挙動が観察された。
|