研究概要 |
木質バイオマスを有用ケミカルスやエネルギー資源として変換し利用するためには、セルロースなどの多糖とリグニンの成分分離が重要である。本研究では、環境負荷の小さいリグニン分解反応系開発へ向けて、選択的白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermisporaが有するリグニン分解反応に着目し、その反応機構を解き明かすことを目的とした。まず、前年度見出したセリポリック酸エポキシドについて、^<13>C同位体標識を行い、精密質量分析とMSフラグメント解析による構造決定を行った。次に過酸化代謝物の前駆体と予想される新規不飽和セリポリック酸2種を化学合成し、これが菌体外多糖マトリックスであるsheatn中の天然代謝物とLC/IT-TOF-MS分析における保持時間、精密質量、MSフラグメントが一致することから、セリポリック酸G,Hとして同定した。さらに、セリポリック酸G,Hの過酸化反応が本菌のマンガンペルオキシダーゼ(MnP)触媒系を介して難分解性の非フェノール性リグニンモデル2量体を効果的に分解することを見出した。新規不飽和セリポリック酸Gは分子内にアルカジエニル構造を有し、過酸化反応開始のイニシエーターとして機能していると考えられる。本反応系は常温、常圧、水系でのリグニン分解反応であり、環境に温和なリグニン分解系開発へ向けた重要な知見である。また、過酸化を触媒する酵素および前駆体合成に関わる酵素の探索と機能解析を進め、ジカルボン酸メチル化酵素遺伝子のクローニング、発現および機能解析を行った。これらの成果を国内学会発表5件、国際学会発表1件により報告した。
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