1. マダニ新規ATG遺伝子の単離・同定:フタトゲチマダニのESTデータベースを用いて、オートファゴソーム形成過程に必須なATG6の相同遺伝子を探索し、そのcDNAを単離することに成功した。2.マダニにおけるオートファジーのモニタリング法の開発:フタトゲチマダニAtg8(HlAtg8)に対する抗体を用いてウエスタンブロット法ならびに蛍光抗体法による免疫染色を行い、内在性HlAtg8の検出を試みた。検出は可能であるが、その方法が煩雑であるため、より最適化する必要がある。また、リアルタイムPCR法では、中腸・卵巣・脂肪体におけるHlATG8の発現が吸血時に比べて未吸血時に増大することが明らかになった。このことは未吸血(飢餓)時にATG8遺伝子の発現が各臓器において上方調節されることを示しており、また、未吸血時の中腸細胞内にオートファゴソームが観察されるという結果と一致する。したがって、マダニのATG8遺伝子発現解析は、オートファジーの検出法の一つとして利用可能であることが示唆された。また、マダニの中腸におけるオートファジーの間接的検出法の一つとして脂肪染色が有用であることを明らかにし、これらの結果をAutophagy誌に投稿し、受理された(平成22年5月に掲載予定)。一方、ショウジョウバエで利用されているリソソーム検出法はマダニ中腸には適さないことが判明した。3.マダニ瀞C遺伝子群/Atgタンパク質群の機能解析:RNA干渉法により未吸血マダニのATG遺伝子群の発現抑制を行った。リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析では、dsRNAを注入後2ヶ月までATG遺伝子群の発現が抑制されることが明らかになった。また、実験群のマダニにおいて寿命が短縮する傾向にあり、これらの結果について今後詳細に検証する予定である。
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