研究概要 |
沖縄地方の農業地域に造成される沈砂池には土砂およびリン成分を削減する効果があり,したがって沈砂池には未利用リン資源が賦存している.本研究では,沈砂池から回収した土砂に菌根菌を投与することによって,土砂に含まれる未利用リン資源をサトウキビ栽培に有効利用することを目的としている.サトウキビをポット栽培し,菌根菌の投与による生育量の変化を調査する.研究実績は以下のとおりである 1.1/2000haのワグネルポットに滅菌土壌12kgを充填し,サトウキビ側枝苗1株を定植した.ポットを12個作成し,そのうちの6個には根元の土壌に菌根菌100gを混ぜて試験区とし,菌根菌を混ぜない残りの6個を対照区とした.サトウキビの品種は農林8号である.2010年4月1日に栽培試験を開始し,2011年3月3日(48週目)まで4週おきに生育量(草丈,茎直径,展開葉数)を測定し,2011年3月30日に収穫して茎部の生育量(茎長,節数,生質量)と甘庶糖度を測定した.水分ストレスを与えないように灌水を継続した 2.48週目の草丈は対照区で1950--2167mm,試験区で1896--2193mmに分布した 3.48週目の茎直径は対照区で21.80--24.70mm,試験区で21.20-25.05mmに分布した 4.48週目までの展開葉数は対照区で33--34枚,試験区で33--35枚に分布した 5.既往の研究結果との比較により,本研究で栽培したサトウキビの生育量は両区ともに一般的であった 6.収穫後の茎部の茎長は対照区で1713--1927mm,試験区で1691--1956mmに分布した 7.収穫後の茎部の節数は対照区で23--24個,試験区で23--24個に分布した 8.収穫後の茎部の生質量は対照区で586.1--745.8g,試験区で516.6-792.5gに分布した 9.収穫後の茎部の各生育量について対照区と試験区との有意差(有意確率5%)は認められなかった 10.収穫後の茎部の甘蔗糖度は対照区で16.9--18.7%,試験区で18.6--19.3%に分布した.両区には有意差(t=-2.57,df=10,p-value=0.02789)が認められた 11.以上より,サトウキビの生育量には差が認められなかったが,試験区の甘庶糖度は有意に大きかった 今後の課題は,サトウキビの汁に含まれるリン含有量と甘庶糖度との関係を調べて,菌根菌の施用によるリン酸吸収量の増大が甘蔗糖度に影響をもたらしたかどうかを明らかにすることである
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