研究概要 |
里地里山生態系において,どのような管理が適正であるのか,また,どのくらいの期間で適正化されるのか,定量的な指標を用いた研究はほとんど行われてこなかった。本研究の目的は,里地里山生態系における植生および管理体系の違いが,系内炭素循環の量および質に与える影響を調べることにより,1.里地里山生態系における適切な管理体系とは何か,2.自然生態糸と里地里山生態系はどれほど異なっており,現在の里地里山生態系は将来どう変化するのか,の2点を明らかにするための定量的な指標を与えることである。平成21年度は,関東地方における里地里山生態系を,湿潤アジアの森林および耕地生態系における炭素循環という,より巨視的なのフレームワーク中への位置づけを行ったうえで,衛星データと地上で観測された気象データおよび植生データより,一次生産量を推定し,関東地方の里地里山生態系を代表する研究サイトを選定した。具体的成果として,1.湿潤アジアにおいて土壌生態系内の劣化指標として有効な易分解性炭素量を,関東地方の里地里山における適正管理の指標として採用できる可能性が示唆されたこと,2.衛星データおよび気象・植生データの組み合わせにより得られる一次生産量のデータを用いることで,任意の研究サイトにおける炭素循環量の推定が可能になったことが挙げられる。本年度の研究成果により,選定した里地里山生態系における生態系内炭素循環の特徴付けが可能になっただけでなく,異なる管理下において実測される各種炭素量を詳細に分析することにより,適正な管理指標の提案が可能になると考えられる。
|