研究課題
植物は外敵から身を守るため、アルカロイドなど生理活性物質を生産し蓄積する。本研究ではニコチンおよびタバコ植物をモデルに、未解明のアルカロイド転流を研究した。特に本研究では、研究代表者がトランスクリプトームから着眼したMATE型トランスポーターC215およびNCS1型トランスポーターT408の二つを解析対象とした。これらトランスポーターについて、その発現部位、局在、輸送能を明らかとし、過剰発現や発現抑制によるニコチン生産への影響を解明することとした。C215輸送体の局在をGFP融合タンパク質として解析し、葉の液胞膜に局在することを明らかとした。また酵母を用いた細胞輸送からニコチンを輸送することも示唆された。過剰発現した植物体では、野生株との差は観察されなかったが、培養細胞において、C215を高発現させるとニコチン生産が増加することから、ニコチン生産に大きな役割を果たすと考えられた。一方、T408輸送体は葉緑体に局在することを、GFP融合タンパク質の安定発現、ならびに葉緑体を単離してのウェスタンブロットにより証明した。さらに半定量RT-PCRにより、T408は植物体の各組織で発現しているが、ニコチン生産を誘導した際には、ニコチン生産部位である根において発現が顕著に誘導されることを証明した。過剰発現、発現抑制した植物体の作出を形質転換により試み、実際に発現レベルが変化していることをウェスタンブロットにより確認した。また、過剰発現した培養細胞でニコチン生産が増加することから、輸送基質は不明であるが、その機能がニコチン生産に重要であることが強く示唆された。これら結果から、今後は有用アルカロイドの高生産や虫害に強い植物の育種への応用が期待される。
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