研究概要 |
バイオマスからの機能性材料開発が活発化する中で、多糖の低分子化物であるオリゴ糖の機能が注目されている。本研究では、食用キノコであるシイタケの抽出液中に含まれる糖質加水分解酵素(グルカナーゼ)群を用いて各種バイオマス多糖を低分子化し、食品・医薬品等へ応用可能な機能性グルカンオリゴ糖を開発することを目的とした。まずはシイタケ子実体中に含まれるグルカナーゼ群の同定、および特性解析を行った。 シイタケ子実体を採取後、25℃、湿度80%にて保存した。4日目に回収しグルカナーゼ活性について検討したところ、シイタケ菌は多種類のグルカナーゼ群を子実体中に分泌し、これらはシイタケ細胞壁成分の自己分解に関与することが明らかとなった。その中の1つGLU1(26kDa)は他の糖質関連酵素とアミノ酸配列において相同性を持たないことから新規糖質加水分解酵素ファミリーに属することが示唆された。また、GLU1遺伝子をメタノール資化酵母Pichia pastorisに導入し組み換え酵素を得ることに成功した。詳細な機能解析を進めたところ、本酵素はマコンブ由来のβ-1,3/1,6グルカンであるラミナリン(β-1,3:1,6=7:1)に対して最も高い分解活性を示すβ-1,3グルカナーゼであり、その分解様式はエンド型であることが判明した。ラミナリン分解反応より得られる生成物として、重合度2-4のβ-1,3グルカンオリゴ糖を確認した。本酵素は側鎖を高頻度に有するレンチナン(β-1,3:1,6=3:2)や、カルボキシル化したβ-1,3グルカン(CM-パキマン、CM-カードラン)に対する活性が低いことから、β-1,3鎖のみからなる部分を特異的に分解し、β-1,6グルカン側鎖や官能基によってその反応が阻害されることが予想された。このGLU1の厳密かつ狭い基質特異性は新規のオリゴ糖を合成する上でも有効であると考えられる。
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