| 研究概要 |
麹菌の小胞体におけるアスパラギン結合型糖鎖を介したタンパク質品質管理機構の解明を目的とし,グルコース転移酵素UGGT(UDP-glucose:glycoprotein glucosyltransferase)およびマンノシダーゼ様タンパク質EDEM1/Htmlの麹菌ホモログAoUGGT,AoHtmlの生化学的解析を行った。
小胞体を主に含む細胞内膜画分を抽出しMan_9GlcNAc_2-PAを基質としてin vitroアッセイを行ったところ,AoUGGT欠損株では活性が見られなかったが,AoUGGT高発現株では野生株に比べて顕著なUGGT活性が検出された。本結果よりAoUGGTがUGGT活性を有することが確認された。一方,AoHtml-EGFP高発現株 野生株の膜細胞内画分を用いてMan_9GlcNAc_2-PAに対するマンノシダーゼ活性に与えるAoHtmlの影響を検討した結果,AoHtml-EGFP高発現株においてMan_8GlcNAc_2-PAへのトリミングが促進された。特にA,B,C鎖のうちB鎖のトリミング選択性を上昇させたことから,AoHtmlが麹菌の小胞体内におけるアスパラギン結合型糖鎖プロセシングに関与することが示唆された。ヒトEDEM1はC鎖のトリミングを促進すると考えられているため,本研究は麹菌とヒトにおけるアスパラギン型糖鎖プロセシングの作用機序が異なることを示唆した。
本研究で得られた知見は,小胞体におけるタンパク質品質管理機構の制御による異種タンパク質生産の効率化に応用できるものと期待される。
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