研究概要 |
本研究では、共生細菌の発生過程における挙動と宿主ホルモン、栄養状態の関係、および共生細菌が宿主体色に及ぼす影響を複数の昆虫で評価する。同時に、ESTデータベースの構築から、これまでほとんど知られていない共生関係に関与する遺伝子の同定を目指すものである。前年度までの研究結果から、特に半翅目昆虫のホソヘリカメムシにおいて,脱皮ホルモンによって引き起こされる絶食状態が、共生細菌の存在量の変化の直接的な原因となっている可能性が高いことが示された。また.共生および発生過程によって発現の変動する遺伝を単離する目的で、ESTデータベースを作製した。今年度は、ESTデータベースを整理して、感染/非感染によって発現が変動する候補遺伝子約30種について、定量的な発現解析を行い、実際に共生と関連する遺伝子を多数同定することに成功した。同時に、遺伝子によっては、発現変動が脱皮前後よりもむしろ齢期の違いによる影響が確認された。さらに、前年度に引き続き、laccase2など体色に関わる複数の遺伝子についても解析を進め.脱皮と密接な関係があることが複数の昆虫で明らかになったことから、共生細菌が宿主体色変化に及ぼす影響を調べる糸口を見出すことができた。加えて、今年度は,ホソヘリカメムシを含む3種のカメムシでRNAiが効果的に効くことを証明した。以上のように共生最近に感染に関わる新規遺伝子の単離と機能解析系の確立から、共生細菌と宿主の相互作用の分子基盤の解明の糸口をつかむことができた。成果の一部については、筆頭著者として誌上発表を行い、国内外の複数の学会で発表を行った。
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