X11 family proteinsはアルツハイマー病の原因遺伝であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の代謝をAPP-X11 family proteins-Alcadein複合体を形成し安定化する分子であり、これまでにX11/X11L二重遺伝子欠損マウス脳でアルツハイマー病の発症原因であるアミロイドβ(Aβ)の産生が亢進していることを明らかにしてきた。また、X11/X11L二重遺伝子欠損マウスは自発的な痙攣発作(てんかん)を起こし、異常な神経細胞活動が起きている脳内領域を同定してきた。本申請研究においては、X11 family proteinsの生理機能解析を目的とし、1.X11/X11L二重遺伝子欠損マウスの新たな表現型として発見した自発的な痙攣発作(てんかん)の発症機構を分子レベルで解明すること、アルツハイマー病とてんかんが同時発症する分子機構の解明を行うこと、2.APP-X11 family proteins-Alcadein複合体がAPP代謝に果たす役割を遺伝子欠損マウスを作製しin vivoにおいて解明すること、以上の2点を目的に解析を進めた。1.痙攣発作発症の原因分子として過分極賦活型チャネル(HCNチャネル)を同定し、HCNチャネル量がアルツハイマー病モデルマウスであるAPP-Tgマウス脳内において減少していることを明らかにした。これらの成果はアルツハイマー病患者の一部で認められるてんかん併発の分子機構解明に大きく貢献する成果であるとともに、新規アルツハイマー病治療のターゲット分子の創出に貢献するものである。2.Alcadein遺伝子の各種欠損マウス、Alcadein-Tgマウスの作製が完了し、脳内APP代謝産物量(Aβ産生量、アミロイド斑形成数等)の解析を行ったところ、Alcadein遺伝子欠損マウス、Alcadein-TgマウスでAPP代謝が変動していることを明らかにした。Alcadeinタンパク質の代謝はアルツハイマー病患者脳で変動していることから、これらの成果はアルツハイマー病治療や発症機構解明に貢献するものである。
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