哺乳動物の概日時計の中枢は、視床下部の視交叉上核の回路網に局在し、全脳から末梢臓器に至るほぼすべての生理機能の約24時間周期リズムを駆動している。個々のSCN細胞内におけるリズム発振機構は、時計関連遺伝子の転写と抑制の自律振動分子フィードバックループモデルが想定されており、1細胞での分子メカニズムの詳細な解析が急速に進んでいる。しかしながら一方で、遺伝子や細胞機能の欠損を回路が補うことや、分子モデルから想定外の変動も明らかにされつつあり、概日時計のさらなる理解の為には、神経-グリア回路網としての振る舞いを明らかにすることが必須である。本研究では、視交叉上核の回路網からシナプス応答および自発活動を観察する為、高解像度かつ高速画像取得が可能な二光子励起顕微鏡の構築を行い、単一細胞解像度で回路網の個々の細胞のカルシウム応答を測定することで、回路網の機能を解明する。本年度は高速フルフレームレート(>30Hz)で画像取得可能なシステムの構築と安定化を行い、また標本深部の細胞群にカルシウム蛍光指示薬を負荷する方法を確立し、数百個の細胞から高速でカルシウム応答を記録する事を可能とした。また、時計遺伝子レポーター動物を用いることにより、組織深部の回路網の遣伝子発現の可視化法も確立した。現在はシナプス入力による回路網応答の可視化解析を行っている。また平行して、2光子顕微鏡システムのさらなる安定化と最適化を行い画像の向上を目指している。
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