エボラウイルス感染は高い致死率を伴う重篤な出血熱を惹起するにも関わらず、現時点において有効な予防、治療法は確立されていない。エボラウイルスの生活環は宿主細胞が有する種々のマシナリーに大きく依存することが知られているが、その中でも宿主細胞への侵入過程は、鍵となる重要なステップである。しかしながら、エボラウイルスの侵入機構の詳細についてはほとんど理解されていないのが現状である。エボラウイルス粒子が宿主細胞に侵入する際には種々の宿主因子が活性化することが想定される。すなわち、RAC1、Arf6、Ras、Src、Cdc42等の上流因子、または、WAVE、PAK1、PI5K、PI3K、PLCなどの下流因子の活性化を介して下流へとシグナルが伝達し、それに引き続いてアクチン再構成が誘導され、最終的に細胞辺縁部のアクチンに富んだ構造(ラッフリング)が生じることでウイルス粒子が効率良く細胞内へ取り込まれる可能性が示唆される。当該年度に遂行した研究成果より、複数の標的宿主因子の活性化がウイルス粒子の取込みに重要であることが判明し、これらの因子がエボラウイルスの侵入過程において重要な役割を担うことが明らかとなった。なお、当該年度において得られた結果を含むエボラウイルスの侵入機構に関する研究成果を現在論文投稿中である。次年度において、さらに詳細な解析を行うことにより、エボラウイルス侵入機構の分子レベルにおける解析が進み、将来的にはエボラウイルス感染に対する薬剤の開発およびエボラウイルスの制圧に多大な貢献を与えることが期待される
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