研究概要 |
中脳黒質網様部GABA作動性ニューロンは、脳内で最も高頻度に自発発火をしている細胞の1つとして知られているが、その高い持続的な自発発火を支える制御機構は明らかになっていない。本研究では、「代謝」という観点から、急性単離ニューロンおよび脳スライスを用いて、細胞外グルコース濃度および温度を変化させた時、黒質網様部GABA作動性ニューロンの自発発火頻度がどのように変動するのか詳細に解析し、その分子基盤を解明することを目的とする。現在までのところ、急性単離した黒質網様部GABA作動性ニューロンを、グラミシジン穿孔パッチクランプ法によりHCN電流の有無でドパミン作動性ニューロンと区別し、室温条件で細胞外グルコース濃度を低下させた時の自発発火頻度の変化を検討した。細胞外グルコース濃度を10mMから8,6,5,4mMに低下させると21例中全例で膜電位が有意に上昇した。しかし自発発火頻度の変化は上昇するもの(14/21例)、変化しないもの(3/21例)、低下するもの(4/21例)があった。今回の結果は、以前、私達の研究グループが報告した脳スライスを用いた単一細胞記録の結果(一定温度条件下、33℃で細胞外グルコース濃度を10mMから4mMに低下させると発火頻度が上昇する)とは異なるものとなった。この結果から、低グルコースにさらされたGABA作動性ニューロンの自発発火は、脳スライヌでは周辺環境にある何らかの因子により維持されて頻度が上昇するが、急性単離した状態ではその因子がないために上昇・無変化・低下の3種類のパターンを示したと考えられた。
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