本研究の目的は、冷え症に効果があるとされる経穴の指圧による生理的・心理的・主観的効果について検証し、指圧の効果について基礎的データを得ることである。平成21年度には、予備実験により確立した方法で本実験としてのデータ収集を行ってきたが、平成22年度は、前年度に引き続きデータ収集の継続、補完代替医療や指圧に関する最新の知見を得るための情報収集活動、データ分析、研究成果発表を行った。 研究の介入環境は、温度・湿度を一定範囲内に保った環境下とし、実施時間帯は午後の一定時間内に統一した。指圧を行う経穴は、「太谿」および「湧泉」の2箇所である。指圧の強さは、全対象者に対して概ね一定になるようにし、研究代表者一名のみが指圧を行うことで手技の統一性を確保した。対象者は20歳以上40歳未満の女性とし、同一被験者に対して、1.両足指圧、2.片足指圧、3.指圧なし、の3通りを実施、かつ月経周期の低温期及び高温期の両者で実施した。それぞれについて、生理的指標(血圧・脈拍数・皮膚表面温・深部温・血流量)、心理的指標(POMS短縮版)、主観的指標(心地よさのカテゴリースケール、局所温度感覚)について経時的に測定した。月経周期等の兼ね合い上、データの欠損があったことから、低温期における1.両足の指圧(指圧群)と3.指圧なし(対照群)の比較について公表する。 「太谿」および「湧泉」の指圧の結果として、指圧群において、介入後に、脈拍数の減少、両足拇趾血流量の増加、両足底皮膚表面温・深部温の上昇、主観的な心地よさや温度感覚の得点の上昇、POMS短縮版における<緊張-不安><抑うつ-落込み><混乱>の得点の低下がみとめられた。対照群では、時間の経過とともに両足拇趾血流量が有意に減少した。血圧は両群で変化しなかった。本研究より、2経穴の指圧は足部冷感に効果的かつ安全な方法であることが証明され、簡便な方法で冷えの不快感を緩和し得ることが示された。
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