メカニカルストレスは骨代謝において重要な役割を果たしている。我々はこれまでに、MC3T3-E1骨芽細胞は伸展刺激により、ストレス応答MAPキナーゼのひとつ、JNKを介してFn14を、p38MAPキナーゼを介してケモカインMCP-3の新規発現を誘導することを明らかにしている。しかしながら、これらの分子の骨代謝における役割は不明な点が多く、さらにメカニカルストレス応答性に発現が上昇することから、その機能解析は骨メカノバイオロジーの分子レベルでの理解、および骨代謝の分子生理または分子病理的解釈の上で重要である。これを受けて本年度は、Fn14とMCP-3の分子特性、すなわち、翻訳後修飾の機構や特異的生理作用の解析に重点を置き研究を展開した。その結果、(1)Fn14はN末にシグナルペプチド配列を有している(2)シグナルペプチドが切断されたと考えられる成熟型のFn14を発現している細胞群は、リガンドTWEAKの刺激によりアポトーシスを引き起こす。対照的に、成熟型Fn14を発現していない細胞群はTWEAK誘導性のアポトーシスに耐性である(3)野生型MCP-3は細胞内にて翻訳されたのち、N末を切断されたもののみが細胞外へ分泌される(4)このN末部分にはやはりシグナルペプチド類似配列と推定上のトランスメンブレン領域が存在する(5)この部位のDeletion Mutantは分泌不全型の表現型を示し、細胞内に蓄積されることを明らかにした。これらの観察により、骨芽細胞はメカニカルストレス負荷により速やかに外環境への感受性を変化させることができ、さらにケモカインを分泌することによって造血幹細胞由来細胞を自身のもとへ遊走させる能力がある可能性が示唆された。
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