造血器腫瘍に対して、現在確立している唯一の幹細胞療法であり、最も強力な治療である造血幹細胞移植を行う際、ドナーNK細胞上の抑制性受容体(KIR)とレシピエント細胞上のMHC class Iの不適合によりドナーNK細胞に同種免疫反応が惹起できた場合、レシピエント腫瘍細胞に対するドナーNK細胞の移植片対腫瘍(GVT)効果により移植後の再発が抑制される。またドナーNK細胞がレシピエント抗原提示細胞を破壊することにより移植片対宿主病(GVHD)の発症が抑制されると考えられている。NotchシグナルカスケードがGVT効果およびGVHDの制御に重要な役割を担っている可能性が高い。 平成21年度はヒト末梢血検体のマルチカラー解析による造血幹細胞移植後のNotch分子の発現様式の詳細な解析の準備段階として、高感度フローサイトメーターを用いて、健常者検体から得られたヒトNK細胞の解析を行った。この実験系は、実際の患者検体では造血幹細胞移植後早期の造血回復が十分でない時期の少数の細胞を用いて解析を行う必要があるため、信極性の高いデータを得るためには事前に細胞調整の最適化・高感度フローサイトメーターの詳細なセッティングが必要である。より詳細な解析を行うため、健常者NK細胞を用い、マルチカラー解析系を導入するための条件設定を行った。
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