造血幹細胞移植は、造血器腫瘍に対して、現在確立している唯一の幹細胞療法であり、最も強力な治療である。造血幹細胞移植の際に、ドナーNK細胞上の抑制性受容体(KIR)とレシピエント細胞上のMHC class Iの不適合によりドナーNK細胞に同種免疫反応が惹起できた場合、レシピエント腫瘍細胞に対するドナーNK細胞の移植片対腫瘍(GVT)効果により移植後め再発が抑制される。またドナーNK細胞がレシピエント抗原提示細胞を破壊することにより移植片対宿主病(GVHD)の発症が抑制されると考えられている。NotchシグナルカスケードがGVT効果およびGVHDの制御に重要な役割を担っている可能性が高い。それらの仮説を検証するため、我々は一連の実験を行った。平成22年度は、前年度に条件設定を行ったマルチカラー解析を用いて、造血幹細胞移植のNotch分子の発現様式の解析を行った。造血幹細胞移植後にGVHDを発症した患者、および健常者のNK細胞を用いて、それらの細胞表面上に発現するNotch分子の発現を解析し、比較した。また腸管はGVHD標的組織として重要であるが、マウスの腸管上皮において、NotchリガンドであるJagged1が発現することを、免疫染色の手法を用いた解析により見いだした。この結果を基に、GVHD患者より得られた病理検体を用いて、Notchリガンド(Delta1、4、Jagged1、2)の発現を、それらに対する特異抗体を用いた免疫組織染色の手法により解析を行っている。
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