GABA合成酵素(GAD67)のプロモーターの下流にGFPを挿入し、GABA作動性ニューロンが同定可能なノックインマウスを用いて、胎仔期、新生期の麻酔薬の曝露が発達段階の中枢神経系の構築においてどのような影響を与えるかを調べることである。そして、その影響が長期間続くものであるかを麻酔薬に対する感受性・疼痛閾値の変化を個体レベルで解析し、臨床使用されている麻酔薬の分子レベルにおける安全性を評価する新規アプローチである 麻酔薬が胎児期、新生児期においてどのような影響を与えるかを明らかにするために、GAD67-GFPノックインマウスを用いて組織学的にGABA作動性ニューロンの脳各部位での分布や神経細胞の比率を求め、麻酔薬の有無で投与時期、麻酔薬の種類で比較検討する。また、その影響を成熟したマウス(12~16週齢)で麻酔薬感受性、不安レベル、協調運動、疼痛閾値を用いて解析する 1.5%セボフルランを生後1日、3日、5日に各12時間、計36時間投与した。濃度1.5%としたのは、2.5%以上のセボフルランでは自発呼吸や循環を保てないと判断したからである。そして、成熟後(4月齢)、海馬、基底核、大脳皮質、小脳などが関与する水中での動きから学習能力を検討した。その結果、セボフルラン麻酔群の学習能力、特に位置感覚の学習能力は、非麻酔群と比べても差がなかった。また、学習に依存しない非学習系の不安を評価するため、高架式十字迷路テストを行った。その結果、セボフルラン投与群では不安行動が強くなる傾向が見られたため、さらに実験数を加え、原因を研究していく予定である。
|