重症免疫不全マウスを用いた子宮筋腫の腎被膜下移植モデルを作成した。このモデルではヒト筋腫組織から分離・培養した子宮筋腫細胞にコラーゲンゲルを混ぜた筋腫細胞移植片を、卵巣を摘除したマウスの腎被膜下に挿入した。次にエストロゲン・プロゲステロンの徐放ペレットをマウス頸部皮下に挿入し、ホルモン投与方法の違いによる移植片の変化を観察した。移植片は腎被膜下で筋腫様組織の再構築を認め、エストロゲン受容体は高い発現レベルを保持していた。また、エストロゲン存在下でプロゲステロン受容体の発現が誘導され、エストロゲン・プロゲステロンの同時併用投与で移植片が増大した。この時、細胞増殖マーカーであるKi67指数が有意に上昇するとともに、個々の細胞が肥大し、細胞周囲の細胞外マトリックスも増加した。このエストロゲン・プロゲステロン同時投与による移植片増大効果は、抗プロゲステロン剤であるRU486の同時投与により、完全に阻害された。この時、Ki67指数は有意に減少し、移植片の細胞増殖が阻害された。以上より子宮筋腫の発育・増大にはエストロゲン・プロゲステロンが同時に必要であることが示された。次年度はエストロゲン・プロゲステロンの周期的投与が筋腫移植片の増大に及ぼす影響を調べるとともに、このモデルが薬剤効果判定モデルとして有用であるかどうかを、エストロゲン合成酵素であるアロマターゼ阻害剤を用いて検討していく予定である。
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