本研究の目的は、地域で生活する精神障害者に対する保健師の支援技術の明確化に向けて、精神障害者の生活の変化とその影響要因及び保健師の支援との関連を明らかにすることである。地域で生活する精神障害者の対する支援は、精神障害者本人のニーズや社会情勢の変化に伴う影響を踏まえ、社会資源等の多少に関わらず、同じ質の支援が受けられるべきであると考える。本研究ではまず精神障害者の生活の変化とその影響要因及び保健師の支援との関連を明らかにすることで、支援技術の明確化の基盤を得ることを目指す。本研究は、3つの調査で構成される。昨年度に引き続き、調査1として在宅精神障害者にインタビューを実施した。対象者の選定条件として「在宅にて生活を送る中で、自らの生活が好転していると捉えていること」、「担当の保健師も、その本人の生活が好転していると捉えていること」等を挙げ、保健師より紹介を受け、2名の対象者にインタビューを実施し、自分の病気に対する思い、日常生活の様子、病気になってから今までの生活についてよくなったと実感すること、これから送りたい生活等について聴取した。本研究では「生活」という用語を、「本人の価値観、習慣、人とのつながり、社会的役割、居住環境、経済状況に関連した生きるための日常の営み」と定義した。分析過程では、用語の定義に沿って、逐語録より生活の変化とその影響要因を導き出した。調査2では、調査1の対象者の生活の変化に対する影響要因となる人物にインタビューを実施する予定であったが、本人の了解を得られない等の倫理的配慮より、実施できなかった。調査3では、調査1の対象者を担当している行政保健師2名にインタビューを実施し、調査1の対象者への支援について、支援内容、その意図等について聴取した。分析過程では、調査1の結果と対比させ、生活の変化と保健師の支援がどのように関連しているのかを導き出した。
|