1.TLR3リガンドの特定 さらに解析を進めた結果、様々な炎症性サイトカインは、CVBの複製に依存しないものの、II型IFN誘導を含めたいくつかの遺伝子誘導には、CVB3の複製が必要であることが明らかとなった。一方で、tagつきのTLR3過剰発現細胞を用いて、TLR3と結合するCVB3蛋白の同程を試みたが、TLR3と結合するウイルス蛋白は存在しなかった。上記の結果と合わせると、TLR3はCVB3の蛋白ではなく、複製の課程で生じる核酸を認識している可能性が高いと考えられた。そのため、今後さらに、CVB3RNAがTLR3と結合するかどうか検討する予定である。 2.TLR3下流のII型IFN産生メカニズムの解明 II型IFN遺伝子のプロモーター解析を行なったところ、転写開始点上流1000bp以内にIRFファミリー転写因子の結合サイトが複数存在することが明らかとなった。そのため、1~9のIRF転写因子について、欠損細胞を用いて、II型IFN誘導への関与を検討したところ、あるIRFの欠損細胞において、その誘導が著明に減弱した。さらに、II型IFNの転写制御機構を明らかにするため、II型IFNプロモーターを含むレポーター遺伝子の作製を完了した。今後、レポーターassayとChIPassayとを合わせて、II型IFNの発現制御機構について、さらに解析を進める予定である。 3.TLR3-II型IFN応答を行う細胞の特定 CD11b陽性マクロファージにおけるII型IFN誘導機構についてさらに解析を行なった結果、TLR3のmimetie ligandであるpolyIC刺激は他のTLR受容体ligandと比較して、非常にII型IFNの誘導が弱い事が明らかとなった。この結果から、CVB3によるII型IFN誘導にはTLR3が必要であるが、十分ではない事が示唆された。そのためpolyICと様々なリガンドを組み合わせて、マクロファージを刺激し、II型IFNの誘導を解析したとろ、特定のリガンドの組み合わせにより、著明なII型IFNの誘導が起こる事が明らかとなった。この結果から、CVB3がTLR3以外のシグナル経路も同時に活性化し、II型IFNを誘導している可能性が示唆されたため、今後さらにCVB3の新しい受容体について、特定を試みる予定である。
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