Toll Like Receptor(TLR)ファミリーは免疫細胞に高発現する病原体認識レセプターである。同分子は生体内の様々な免疫応答制御に必須の役割を果すが、各々のTLRで細胞内分布が異なる理由は不明である。本研究では、TLRの細胞内分布を制御するPRotein Associated with TLR4(PRAT4A)のノックアウトマウスを主に用い、TLR4およびTLR5の細胞内分布と免疫応答との関連を検討した。 FACS解析より、PRAT4A欠損マクロファージ(Mφ)やPECでは細胞表面TLR4が完全に欠損する。しかし、PRAT4A欠損PEcでTLR4リガンド(Lipid A、大腸菌)に対する応答が消失していたにも関わらず、PRAT4A欠損Mφでは多くのサイトカイン産生が残存する。また、同MφではTLR4リガンド刺激に伴う抗原提示に必要な共刺激分子の発現上昇はほとんど影響を受けない。この事実は、細胞表面TLRであると考えられていたTLR4が細胞内でも機能的であることを示唆し、抗原提示など特定の免疫応答が細胞内TLR4に担われる可能性を示す。これらの成果は現在、国際学術誌に投稿中である。 また、これまでTLR5とPRAT4Aとの関係は不明であった。今回、PRAT4AはTLR5と会合することでTLR5の糖鎖修飾を制御し、細胞表面への発現に必須であることを解明した。PRAT4AをノックダウンしたJ774ではFlagellinに不応答であり、PRAT4AがTLR5の機能的成熟に必須であることが示された。現在、樹立済みの抗TLR5モノクローナル抗体やPRAT4Aノックアウトマウスを用い、endogenousに発現するTLR5とPRAT4Aとの関連を更に模索中である。TLR5が細胞表面のみで機能的であるか否かを解明することが今後の課題となる。
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