研究概要 |
Rag2欠損マウスにOvalubumin(OVA)に特異的なT細胞受容体のtransgenicマウス(DO11.10)を交配したRag2-/-DO11.10マウスでは、T細胞は全てOVA特異的であり、胸腺で自然に分化するnaturally occurring regulatory T cell(nTreg)を欠損しているが、inducible regulatory T cell(iTreg)は保たれている。一方Rag2-/-DO11.10 Scurfy(sf)マウスでは、nTreg、iTregともに存在しない。また、全身の核内にOVAを発現するLd-nOVAマウスをRag2-/-DO11.10マウスと交配すると(Rag2-/-DO11.10x Ld-nOVA:以下RagDBLと呼ぶ)、T細胞の多くはCD4+CD25+Foxp3+のnTregに分化している。本申請研究では、Rag2-/-DO11.10,Rag2-/-DO11.10sf,及びRagDBL由来のT細胞を、T細胞欠損マウスに移入後にOVA/alumを腹腔内投与後、OVA点鼻を繰り返してアレルギー性気道炎症を作成し解析を行った。肺と縦隔リンパ節については単離細胞液を作成し、FACSにて主にCD4+T細胞の表面マーカー、Foxp3発現、細胞内サイトカイン(IL-4,IFN-γ,IL-17)を解析した。また気道過敏性、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、細胞分画、サイトカイン(IL-4,IL-13など)、肺病理像(H&E染色、PAS染色)、肺抽出液のサイトカイン測定(IL-4,IL-5,IL-13,IL-17,IFN-γ,IL-10など)を行った。本年度の解析では、Thy1.1で標識して移入したRag2-/-DO11.10由来のT細胞がFoxp3を発現し、確かに生体内でiTregが誘導されていることを確認した。一方、Rag2-/-DO11.10由来T細胞の移入群と、Rag2-/-DO11.10sf由来T細胞の移入群では、気道炎症(BALF、肺組織)やサイトカイン産生(BALF、肺抽出液、細胞内サイトカイン)の程度などに明らかな差は認められなかった。誘導されたiTregの割合が少なかったため、気道炎症におけるiTregの役割を十分に評価できていない可能性が考えられ、次年度に移入細胞数や感作・抗原吸入などの方法を再検討する予定である。
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