研究概要 |
変形性関節症(OA)は様々な関節に発症し、膝関節におけるOAの原因として、形態異常、不安定性、筋力低下等が指摘されている。これらは顎関節領域におけるOAの病因とも大きく関与していると考えられる。また、近年、膝OAにおいて、軟骨基質の主要成分であるタイプIIコラーゲンを分解すると言われているカテプシンKの関与が報告されており、OAの増悪化に関わりが深いと考える。そこで、顎関節領域に不安定性。形成不全(形態異常)を再現する動物モデル(ラット)を作製し、開口による非生理的負荷を加えた際のカテプシンKの発現を比較検討することで、OAの病態を明らかにすることを目的とした。 今年度の研究成果は以下の通りである。 1.顎関節形成不全モデルの作製と関節形成不全の評価 (1)3週齢雄性Wistar系ラットの両側咬筋を切断し(実験群)、未処置のラットを対照群とした。実験開始3,6週後に屠殺し、マイクロCT(SMX-90CT)を用いて下顎頭の形態評価を行った。 (2)9週齢の実験群において、下顎頭体積、下顎頭軟骨下骨の体積および表面積が対照群と比較して有意に小さな値を示した。 (3)6,9週齢の実験群において、下顎頭軟骨下骨の骨梁間隙が対照群と比較して有意に大きく、骨密度は有意に小さな値を示した。 以上より、咬筋切断により咀嚼筋力を低下させると顎関節の形成不全が生じることが明らかとなり、顎関節形成不全を確実に再現できるモデルの作製が可能となった。 今後の展開として、下顎頭軟骨の組織学的評価を行い、顎関節形成不全モデルに非生理的負荷を加えた際のカテプシンK、MMP-13の発現を組織学的、生化学的に比較検討する予定である。
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