研究概要 |
変形性関節症(OA)は様々な関節に発症し、膝関節におけるOAの原因として、形態異常、筋力低下が指摘されている。これらは顎関節領域におけるOAの病因とも大きく関与していると考えられるが、これまでに報告がない。そこで、本研究では顎関節形成不全を再現する動物モデル(ラット)を作製した後、過開口による非生理的負荷を加えた際の変化について比較検討することで、成長期における顎関節形成不全とOAとの関連を調べることを目的とした。3週齢雄性Wistar系ラットの両側咬筋を切断し(実験群)、未処置のラットを対照群とした。実験開始3,6週後に屠殺し、マイクロCTを用いた下顎頭の形態評価、Toluidine blue染色による組織学的評価を行った。その結果、実験群は対照群と比較して下顎頭形態は小さく、下顎頭軟骨下骨の骨密度が低いこと、軟骨の厚径が小さいことが認められた。咬筋切断により咀嚼筋力を低下させると顎関節の形成不全が生じることが明らかとなり、顎関節形成不全を確実に再現できるモデルの作製が可能となった。次に、同様の実験開始6週間後に1日3時間の過開口を5日間行い、屠殺した。未処置のラットの対照群、咬筋切断(+)群・過開口(-)、咬筋切断(-)・過開口(+)群、咬筋切断(+)・過開口(+)群の4群において、Hematoxilin Eosin染色による組織学的評価を行った。過開口を行った両群では、滑膜における血管拡張、炎症性細胞の浸潤、フィブリンの沈着が認められ、咬筋切断(+)・過開口(+)群において、より顕著な炎症所見が認められた。一方、過開口を行わなかった両群においては、炎症所見は認められなかった。以上より、成長期の咀嚼筋力低下によってもたらされた顎関節形成不全が、顎関節炎の発症、増悪化に関与することが示唆され、さらにそれに伴うOA発症に関与する可能性が考えられた。
|