研究参加に同意した健康な女性26名(平均年齢27.6±4.5歳)を対象に、療養環境における食事場面を想定した実験室内で、色の刺激が味覚閾値に与える影響を明らかにすることを目的とした。 実験は一人あたりのべ4日間で行い、食卓の色環境とした白、赤、青、緑の4色の420mm×315mmの色呈示の影響を、味覚定性定量検査用試薬による味覚閾値、質問紙による主観評価の変化によって測定した。実験1日目は、結果の信頼性を確保するために、2回の白呈示を行った。対象者は初めに実験の説明を受け、実験前の主観評価測定と安静をとってから、1回目の白呈示による実験に20~25分参加した。その後、10分の休憩・安静を経て、2回目の白呈示による実験に20~25分参加し、1日目の実験を終了した。実験2日目から4日目は、実験の説明から1回目の白呈示までは1日目と同様であったが、10分の休憩・安静の後には、赤または青または緑による2回目の色呈示実験に20~25分参加した。赤・青・緑の色呈示の順番はランダムとした。 その結果、赤と緑の呈示は4基本味のうち塩味を敏感にし、青と緑は甘味を敏感にした。また、緑呈示では塩味が敏感になったヒトは食欲が増進し、赤呈示で敏感になった人は疲労感や不快感が強かった。赤の活用には注意を要したが、緑や青は対象者の状態に関わらず味覚閾値を変化させる有効な色刺激であった。 食事のおいしさに関連する味覚閾値に影響を及ぼす色の存在が明らかになり、意図的な色活用による環境づくりの可能性が示唆された。
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