本年度は、本研究の主目的であるsulfoquinovosylacylglycerolによる^<131>I標識metaiodobenzylguanidine内照射療法効果増強確認のための基礎的データ収集を行った。ヒト神経芽細胞腫(SK-N-SH)皮下担癌ヌードマウスモデルおよび腹腔内播種モデルにおいて、^<131>I標識metaiodobenzylguanidineの腫瘍集積性を検討した。静脈内投与6時間後における皮下腫瘍集積は1.40%ID/gであった。一方、静脈内投与における腹腔内腫瘍への集積は、3時間後1.22%ID/g、6時間後1.99%ID/gと皮下担癌腫瘍と同様であったのに対し、腹腔内に^<131>I標識metaiodobenzylguanidineを投与した場合には、投与2時間後35.9%ID/g、6時間後15.5%ID/gと非常に良好な腫瘍集積を示した。同一投与量における腹腔内播種腫瘍線量をMIRD法で推定したところ、静脈内投与では450cGy、腹腔内投与では4140cGyと腹腔内投与で充分な線量を確保できると同時に、主要臓器における治療効果比に約4-14倍の差が認められ、抗腫瘍効果と毒性の両面において、腹腔内投与の優位性が明らかであった。従来から、放射能標識抗体では指摘されていたことであるが、抗体が分子量15万と大きなタンパクであるのに対し^<131>I標識metaiodobenzylguanidineは300弱の小分子であるため体腔内から循環系への吸収がより迅速に生じる可能性があり、^<131>I標識metaiodobenzylguanidine体腔内投与の意義は従来検討されていなかった。今回の結果から、体腔内に播種した状態では、静脈内全身投与よりも、体腔内投与が望ましいことがわかる。また、内照射療法に用いることができる可能性のある候補分子の多くが^<131>I標識metaiodobenzylguanidine同様の小分子であるため、他の内照射用製剤でも体腔内投与が有効に機能するであろうことを示唆する。さらに、本研究の主題であるSulfoquinovosylacylglycerolも小分子であり、Sulfoquinovosylacylglycerolと^<131>I標識metaiodobenzylguanidineの双方を体腔内投与することによる利益をも意味するものであると考える。
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