正常動物におけるカルシウム関連蛋白である、カルバインD(Cal-D)、パルブアルブミン、カルレチニンの分布について免疫組織学的に検討した。さらに逆行性トレーサー法を併用して、これらのカルシウム関連蛋白陽性ニューロンの投射路について検討した。 また正常脊椎動物ではその発生過程において、初期に過剰産生された神経細胞のうち、およそ半数がプログラム細胞死によって淘汰される。申請者の行った研究において、先天聾動物ではこのプログラム細胞死のスイッチが入らずに多くの細胞が生き続けている可能性があり、この仮説を確かめるため、正常発達期ラットを用いて経時的に、聴覚中枢神経核のプログラム細胞死(アポトーシス)の有無を免疫染色法にて検討した。正常の聴覚発生過程の中で内耳のラセン神経節細胞のプログラム細胞死が起こることが知られているが、聴覚中枢神経核での検討はかった。プログラム細胞死がHearingonsetと一致した時期にみられるならば、聴覚入力刺激がプログラム細胞死のスイッチになるという、新しい解釈を示唆するものである。 聴覚中枢では多くの交叉性投射路と非交叉性投射路が交錯しており、一側耳の難聴と両耳の難聴とでは、中枢聴覚系の受ける影響も当然異なるものと思われる。例えば音源定位やカクテルパーティー効果などの両耳聴のためには、両耳からの音入力の差を感知できる神経核(Binaural neuron)が存在する。一方で片耳の音入力に鋭敏に反応することの多いMonaural nueronがあるが、これらの神経核の違いによって、それぞれの先天性難聴モデル(片耳か両耳か)において差が現れるかどうか確認した。
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