研究概要 |
肺癌の発生・進展において発現制御異常を示すmRNAとマイクロRNAを規定する遺伝子群を同定するため、これまでに、マイクロRNAとそのmiRNAが直接制御する可能性の高い遺伝子とマイクロRNAを抽出した。そこで、次に、マイクロRNAとそのマイクロRNAを転写制御する遺伝子を抽出した。マイクロRNAを制御する遺伝子を予測するため、肺腺癌検体76症例のmRNAおよびマイクロRNAのマイクロアレイデータを用い、遺伝子とマイクロRNAの発現パターンにおいて、Bonferroni補正後のp-valueが0.05未満となる有意な正相関を示す、遺伝子とマイクロRNAを抽出した。ここでは、マイクロRNAの転写を制御する遺伝子に注目するため、GO termを用いて転写因子としての活性をもつ遺伝子を選択し、解析に用いた。その結果、有意な正相関を示す65個のmRNAとマイクロRNAの組合せが得られた。このうち、各miRNAの5'上流5kbの配列に対して、転写因子の予測結合部位をTFBIND (Tsunoda T et al., Bioinformatics (1999), 15, 622-630)を用いて確認した結果、マイクロRNAとその転写因子である可能性の高いマイクロRNAと転写因子の組合せ12個が得られた。得られた転写因子として、細胞周期進行に関わるMYBファミリーのメンバーであるMYBL2や、細胞周期の進行に必要な一連の遺伝子群の発現を制御し、細胞増殖に必須の役割を果たすE2FファミリーのメンバーであるE2F8などがあった。今後、このネットワークを中心として、遺伝子とマイクロRNAとの制御関係を実験的に検証していく予定である。
|