研究課題
本研究課題の最終目標は、臍帯血幹細胞を用いた周産期脳障害に対しての新規治療法を開発することである。この目標に向かって、本年度は、以下の成果をあげた。(1) 昨年度作成したプロトコールに沿って、臍帯血の採取、運搬、調製、凍結保存システムの構築をした。臍帯血採取は、帝王切開にて出生した新生児の臍帯クランプ切離後の胎盤側より採血バックを用いて行った。Ficoll Paque法を用い単核球分画にし、使用まで液体窒素下に保存した。また、採取・保存した臍帯血の質の評価として顆粒球・マクロファージコロニー形成細胞(GFU-GM)数を評価し、保存後の細胞の質も問題がないことを確認した。(2) 昨年度に作製した周産期HIEモデルラットに臍帯血細胞を投与して、その効果を評価した。上記により凍結保存した臍帯血を解凍し、低酸素虚血負荷3時間後に臍帯血細胞を腹腔内投与した。低酸素負荷24時間後、灌流固定し、免疫組織学的に検討することにより、以下の事がわかった。i) 抗ヒトHLA-DR抗体により移植細胞を同定し、腹腔内へ投与した細胞が脳内へ到達することを確認した。ii) 抗Cleaved-caspase-3抗体により、アポトーシス細胞の数をコントロール群と比較検討したところ、臍帯血細胞により抗アポトーシス作用が得られる可能性が考えられた。iii) 酸化ストレスマーカーである抗4-Hydroxy-2-Nonenal抗体を使用し、免疫組織学的に評価したところ、臍帯血細胞投与により抗酸化ストレス作用を期待できると考えられた。iv) 抗phospho-Histone H3抗体を使用し、海馬と脳室下帯での分裂細胞数を免疫組織学的に評価したところ、臍帯血細胞投与により、細胞新生を亢進させる可能性があると考えられた。今後、本研究期間で得られた結果のより詳細な検討や行動学的な評価を行うことにより、臍帯血細胞投与による効果を明らかにする予定である。
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Pediatr Res
巻: in press
Pediatr Int
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