研究概要 |
本研究計画は、GFP actin transgenic mouseを用いた壊死性腸炎モデルを用いてミクロレベルでのリアルタイムイメージを二光子レーザー顕微鏡(Two-photon laser-scanning microscopy ; TPLSM)にて観察し、疾患とその治療効果を経時的に同一個体で判定することを可能とするものである。 現在、TPLSMと独自に開発したorgan stabilizing systemをさらに発展させることで、血管内皮層と血管平滑筋層をそれぞれ同定することが可能となった。また、これによりマウス腸間膜の微少血管において、血管内皮層を選択的にLaser照射することが可能となった。これまでのレーザー血栓モデルでは、血管壁の腫脹・膨化・破綻が発生してしまい、血栓の均一性や再現性がなく、その評価方法も非常に曖昧なものであったが、今回血管内皮層選択的レーザー照射が可能となったことで、これらの有害事象は一例にも認められなかった。さらに、レーザー障害5分後では,レーザー障害部位の下流に血小板が直線的に接着していることが血小板1個単位で確認され,レーザー障害15分後には,レーザー障害部位の下流より血栓形成が始まっていることが確認された.血管内皮選択的レーザー照射による血栓形成の現象を高解像度のリアルタイム画像として観察し,その現象を捉えたのは世界初であり,血管周囲の障害を伴わない真の血栓モデルとして有用なものとなると考えられ、現在この特徴的な血小板凝集についての論文を投稿中である。 次に壊死性腸炎モデル作成であるが、Zaniらが報告(Eur J Pediatr Surg 2008)した低酸素環境への暴露+経口Lipopolysaccharide(LPS)を新生児マウスに投与すると、きわめて致死率が高いことが判明した。我々のモデルの特異性・有用性はリアルタイムでのマウス腸間膜微少血管における変化や、腸管粘膜における変化を捉えることであるため、観察前もしくは観察直後に死亡してしまうようなモデルは不適とし、現在、低酸素環境への暴露時間やLPS投与量の微調整を行い、至適モデルの作成中である。
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