研究概要 |
ペプチドは微量で強力な生理活性を有するものが多いことから重要な創薬標的分子であるため、ペプチドを医薬品につなげる創薬技術の開発は最重要かつ緊急の研究課題である。本研究は、ペプチドリード創薬において有効とされるアミド結合等価体(クロロアルケン型ジペプチドイソスター)の開発を目的として、gem-アリルジクロリド系化合物を用いた有機銅試薬による合成研究を行った。前年度の研究において、ペプチド結合をクロロオレフィンで置換したクロロアルケン型ジペプチドイソスターを設計し、トランスアミド等価体(Z型クロロアルケン)の立体選択的合成法を開発した。そこで、平成22年度はシスアミド等価体(E型クロロアルケン)およびα,α-ジクロロ-β-アミノ酸の合成研究について検討を行い、以下の結果を得た。1.シスアミド等価体の立体選択的合成法の開発γ位に二つの塩素原子を有すうα,β-不飽和カルボニル化合物に対し、嵩高いアルキル基を有する有機銅試薬を作用させると、E型クロロアルケンが優先的に得られることを見出した。さらに有機銅試薬や溶媒、添加剤について精査したところ、E型クロロアルケンを高選択的に得ることに成功した。2.α,α-ジクロロ-β-アミノ酸の立体選択的合成法の開発クロロアルケン型ジペプチドイソスターの合成中間体であるα,α-ジクロロ-β-アミノエステルの合成研究を行った。D-グロン酸由来の光学活性なニトロンとジクロロケテンシリルアセタールとのジアステレオ選択的な環化反応、続いて過塩素酸処理によってα,α-ジクロロ-β-アミノエステル誘導体である光学活性なα,α-ジクロロイソキサゾリジノンを合成した。本化合物にα-ケト酸を用いてN-O結合を切断しα,α-ジクロロ-β-アミノ酸の立体選択的合成に成功した(Heterocycles, 2011, 82, 1515)。
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