研究概要 |
本研究では、Apelinとその受容体APJによる血管構造の制御能を利用した新規の血管再生療法や腫瘍血管新生療法の開発の可能性を探るため、その基盤となる細胞機構や分子機序を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、(1)血管走行性決定のメカニズムの解明、(2)血管の併走性の生理的意義について解析し、その結果を基に(3)血管構造の制御による治療法の開発の検討を行っている。 (1)血管走行性決定のメカニズムの解明 発生過程の皮膚におけるapelinおよびAPJの発現について免疫染色にて検討したところ、APJが胎児の発生に伴い静脈特異的に発現していくことを見いだした。対照的に、apelinの発現は動脈に特異的に認められ、動脈から産生されたapelinが静脈のAPJに働きかけることを証明することができた。 (2)血管の併走性の生理的意義 血管の併走に異常が認められるApelin遺伝子欠損マウス、またはAPJ遺伝子欠損マウスを用いて各種試験を行ったところ、損傷治癒、体温調節、血管炎症モデルにおいて、野生型マウスと比較して不利な表現形が認められた。現在は、血管併走性の異常とこれらの表現形が直接関連しているかの検討を行っている。 (3)血管構造の制御による治療法の開発の検討 将来的なapelin/APJ系の臨床応用を実現するため、apelinのアゴニストの作成とその活性測定系について検討を行った。Apelinアゴニストについては、他グループからの報告を参考に作成を進めている(Iturrioz X, et al.FASEB J.2009)。また、活性測定系としては、apelin受容体を恒常的に発現する細胞の作成に成功したため、引き続き解析を進めていく予定である。
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